シニアと地域が支えるシングルマザー向けシェアハウスが目指す新しい福祉の形

厚生労働省が2017年12月15日に発表した「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」の結果によると、シングルマザーの平均年収は243万円。新卒社員(大卒)の平均年収が200万円~230万円程度と言われていることから考えると、決して十分とは言えない。当然ながら、子供が小さければ保育所などに預ける必要があり、その費用がかかる。さらに、シングルマザーの場合、賃貸住宅への入居を拒否されるケースもあるという。

一方で、少子高齢化社会による単身高齢者や高齢夫婦のみの世帯の増加に比例して、孤独死も年々増加傾向にある。もちろん、中には一緒に生活をする誰かがいれば助かったというケースも少なくないはずだ。

これらの問題を同時に解決すると期待されているのが、シングルズキッズ株式会社代表の山中氏が始めたシングルマザー向けシェアハウスだ。第一弾として2017年6月に世田谷区の住宅街に「マナハウス上用賀」がオープンした。

最大の特徴は、豊富な経験を持つ保育士が管理人を務めている点だ。一般的な賃貸住宅の管理人とは違い、平日の子供たちの夕食の準備や保育園などへの迎えもおこなってくれるため、母親は安心して仕事に専念できる。

また、1Fは地域に開放し、時間のあるシニア世代の住人と遊んだり勉強を見てもらったりできる貴重なコミュニケーションの場として、徐々に充実させていく予定だ(下図参照)。

将来的には、子供が自立してしまって使わなくなった空き室を、シェアハウスよりも安い賃料で貸し出したいと言う。シングルマザーの負担が減るだけでなく、単身高齢者にとっては万が一のときに貸している部屋の母親や子供が救急車を呼んだり助けを呼びに行ったりすることで、孤独死の危険性が低下するため、お互いにメリットがある。

本誌でも、母子家庭サポート、孤独死対策の両面から、今後もこの新しい福祉の形をウォッチしていく予定だ。

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